« 大人のカニカマ | トップページ | オトナの階段のぼる »

エロボイスのエンジニア

数日前、ドラム式洗濯機が壊れた。内側と外側のドアの取っ手がどちらも壊れてしまい、開かなくなってしまったのである。

購入したのは2007年3月だが、ビックカメラの5年保証とやらに入っていたのでこれ幸いとデンワしてみた。デンワはなかなか繋がらない。みんなもいろいろ故障して大変なんだなーと感慨にふけってみる(わけない)。

やっとこさデンワが繋がったので、ここぞとばかりにていねいに状況を説明した。

「ある日いつものように洗濯機のドアを開けようとしたら、乳歯が抜けるみたいに取っ手がポロリととれたのです。蓋が開かなくなり、洗濯もできず、とてもとても困っているのです」

この説明で破損の状況が伝わったのかどーかは分からないが、困っている切実さは感じてもらえたと思う。そう信じたい。いずれにしても、すぐにメーカーのエンジニアリング会社にレンラクしてもらい、翌日修理に来てくれる運びとなったのである。

・・・・・

約束の時間に、そのエンジニアはやってきた。ストライプのワイシャツに幾何学模様のネクタイをした中肉中背の男性である。黒い樹脂製の軽量アタッシュケースとダンボール製の箱といろんなモノが入ったデカイビニール袋を持っている。両手は塞がっている。どうやってチャイムを押したのか。

エンジニアは開口一番、「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と頭をさげた。なんだかやけに腰が低い。「いえいえ、すぐに来てくださって助かります」と返答して、早速洗濯機のある洗面所に案内した。案内と言っても、玄関からわずか数メートルである。無言で指差すだけ。

洗濯機の前で再び破損の状況を説明し、とれてしまったドアの取っ手を見せた。そして前日のデンワのように、「乳歯が抜けるみたいにポロリととれたのです」と話した。差し出した取っ手はシルバーコーティングが施されており、乳歯と言うよりはむしろ銀歯である。「銀歯がはずれたみたいにポロリととれた」のほうがよかったなと反省してみる。

エンジニアは銀歯、もとい壊れた取っ手を観察すると、「なるほど、じゃあこれから修理にとりかかります」と生真面目に答え、道具を広げ始めた…。

修理の間、隣の台所でニンテンドーDSをしながら待つ。こんなとき、他にどーやって待てばいいのか。テレビを見るのも変だし、新聞はもう読んだし、手持無沙汰だなー。と思っていたのもつかの間。集中して作業の進行具合に耳を澄ます羽目となった。

そのエンジニア洗濯機のあちこちをチェックしているのだが、何か発見(?)があるたびに、「ああっ」「おおっ」というなまめかしい声を出すのだ。喘ぎ声に近い。なんちゅうか、アダルドビデオチックなエロボイスである。

このエンジニアは修理作業の間じゅうずっと、このエロボイスを発していたのだ。あうあう。

いよいよ破損箇所の点検が終わり、取っ手の壊れたドアを新しいのとまるごと交換する作業に突入する。持参したダンボール箱にはスペアのドアが入っていた模様である。ドアをはずすのはそんなに簡単ではないらしく、「ああっ」とか「ううっ」とか「おおっ」とか「はっ」とか様々な声を出しながら作業を進めている。もちろんエロボイスだ。力を込めるときは、声が少し大きくなるのだがそれを押し殺すように発声してエロさが倍増する。それをDSやってるふりしながら聞き耳立てる。われながらアホ全開である。

10分近く格闘した末、めでたくドアは新品と交換された。エンジニアは壊れたほうのドアをダンボール箱にしまい、帰り仕度をはじめた。もちろん、何か動作をするたびに、「ああっ」「ううっ」「ふうっ」と喘ぐような声を出す。最後のほうは、心なしか「フィニッシュ後の声」みたいであった。

・・・・・

このようにして洗濯機は再び使用可能となったのであるが、ドアを開けるたびにあのエロボイスを思い出してしまう。礼儀正しいし、仕事は迅速だし、エンタメ性もあるし、なかなか有能なエンジニアであった。名刺をもらったので、冷蔵庫にペタンと貼っておいた。

|

« 大人のカニカマ | トップページ | オトナの階段のぼる »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

今日の日記は面白いですねー
私も一瞬エンタメ性のあるエンジニア目指そうかと思いましたよ。

投稿: へべれけ吉田 | 2009年6月19日 (金) 14時43分

ほんとうに面白い。
いつも楽しみに読んでます。

投稿: | 2009年6月19日 (金) 16時35分

吉田姫

エンタメはほどほどに。

投稿: 丸の内べる | 2009年6月21日 (日) 00時28分

この記事へのコメントは終了しました。

« 大人のカニカマ | トップページ | オトナの階段のぼる »